中小企業診断士1次試験
経営法務のポイント
経営法務というと経営に関する法律を全て全て勉強しなければいけないというような印象を受けますが、試験に出る範囲は以下の分野に限られています。この限られた範囲を要領よく学習すれば及第点はとれるはずです。(2002年〜2006年)
目次
1.事業開始、会社設立及び倒産などに関する知識
2.知的財産権に関する知識
3.取引関係に関する法務知識
4.企業活動に関する法律知識
5.資本市場へのアクセスと手続
1.事業開始、会社設立及び倒産などに関する知識
1.1.事業開始
個人の事業開始-出題されていない
法人の事業開始
1.1.1.法人の種類
合名会社
・直接無限責任社員のみで構成
・社員の地位の譲渡は他の社員の承諾がないとできない
合資会社
・直接無限責任社員と直接有限責任社員で構成
・無限責任社員の地位の譲渡は社員全員の承諾が必要
・有限責任社員の地位の譲渡は無限責任社員全員の承諾が必要
特例有限会社
解散・設立登記により株式会社へ移行
株式会社
・間接有限責任社員で構成
・社員の持分の譲渡は自由
LLC(合同会社)(2006年本試験)
・法人格を持つ。法人税を課せられる。
・設立手続が簡単で、機関設計も柔軟。
・損益分配を出資比率に関係なく決めることができる。
・法人社員が認められる。(合名・合資も同じ)
・登記は必要。構成員1人となっても存続可能。
LLP(有限責任事業組合)(2006年本試験)
・法人格を持たない(民法組合を有限責任にしたもの。あくまで契約に基づく人の結合)
・パススルー課税が適用されるので、税制面で有利。
・有限責任制を第3者に対抗するためには登記が必要。
・各当事者が出資をして、共同の事業を営むことを約し、出資の払い込みをすることにより効力が生ずる諾成契約。
・構成員1人となった場合は存続不可
・損益分配を出資比率に関係なく決めることができる。
・業務に制限あり
最低資本金規制(撤廃)
1.1.2.会社の設立と登記
1.1.2.1.設立の流れ
定款の作成 ー>公証人による定款の認証 ー>株式発行・払い込み ー>設立総会で取締役・監査役選任 ー>設立登記
発起人の株式払込担保責任
登記申請事項
本店所在地は2週間以内、支店所在地は3週間以内
ローマ字などの商号登記もできる
登記を行う際に出資を証明する書類(2006年本試験)
発起設立・・・残高証明
募集設立・・・払い込み保管証明
1.1.2.2.定款の記載事項
定款の内容を変更するには株主総会の特別決議が必要
絶対的記載事項(7つ)
目的、商号、本店所在地、発行する株式の総数、発行済株式数、公告の方法、発起人
(注)決算公告を電子公告で行うことはできるが定款にその旨記載することが必要
相対的記載事項
定款の効力には影響ないが、定款に定めておかないと効力が生じない事項
変態設立事項(通常の方法によらず会社を設立する場合)
・原則として裁判所の選任する検査役の調査を受けなければならない
・5ケース --- 現物出資、財産引受、発起人の特別利益、発起人の報酬、会社の負担に帰すべき設立費用
・少額財産の特例(2005,2006年本試験)
財産の価格が500万円を超えていない場合
および財産の評価が適正に行われるとみられる場合は検査役の調査は免除される。
財産価格の妥当性を弁護士、公認会計士、税理士が証明した場合も検査役調査は不要
任意的記載事項―出題されていない
1.1.2.3.事後設立
・会社の成立後2年以内に、成立前からある財産を資本の20分の1に相当する
価格以上で購入すること
・株主総会の特別決議が必要
・現物出資と同じく、検査役の調査が必要
1.2.届出・手続等
1.2.1.許認可・届出が必要な事業
1.2.2.労働保険・社会保険の届出
一人でも従業員がいれば労働保険が成立、労働基準監督署へ保険関係届を提出する。
一人でも従業員がいれば健康保険・厚生年金保険新規適用届を社会保険事務所長に提出しなければならない。
1.2.3.税務上の届出
開廃業届は事業を開始して1カ月以内に所轄税務署に提出する
青色申告納税制度
事業開始後2カ月以内に青色申告承認申請書を提出する
複式簿記による正確な記帳を行わなければならない(仕訳帳、総勘定元帳が必要)
欠損金の繰越控除、特別控除などが認められる
1.3.合併等の手続(事業再編)
1.3.1.合併
・存続会社では、発行する新株式数が20分の1を超えず、かつ、合併交付金の額が純資産額の50分の1を超えない場合は株主総会の特別決議省略可能(2005年本試験)
・消滅会社が債務超過の場合、合併できない。(2005年本試験)
・消滅会社での株主総会の特別決議省略は不可
・債権者保護手続きあり
・デューデリゼンス
投資対象の詳細かつ多角的な調査
・合併公告
決算公告に関する事項を記載することが必要
決算公告
総会で承認された貸借対照表を記載することが必要だが、損益計算書の記載は不要
1.3.2.株式交換(株式移転)
・株式移転 --- 既存の会社が完全親会社を新たに設立するための手続き
・完全親会社では、発行する新株式数が発行済株式数の20分の1を超えず、かつ、合併交付金の額が純資産額の50分の1を超えない場合は株主総会の特別決議省略可能
・債権者保護手続きなし・・・会社財産の変更を伴わないため
1.3.3.会社分割
分割会社
・発行する新株式を全て分割会社に割り当てる場合で、かつ、承継する財産の帳簿価格が純資産額の20分の1を超えない場合は株主総会の特別決議省略可能(2005年本試験)
・
分割計画書を作成
・
分割計画書または分割契約書は一定期間、本店に備え置かねばならず、株主および債権者は閲覧することができる。(2005年本試験)
・会社分割に伴う労働契約の承継(労働契約承継法)
分割計画書を承認する株主総会の2週間前までに以下の対象者に書面で通知
承継労働主要従事労働者---残留させられる場合は異議申立をして、
残留せず承継会社に承継されることが出来る。
指定承継労働者(上記以外で分割計画書に記載のある者)
--- 意義申立した場合、労働契約は承継会社に承継されない
労働組合
パートタイマー、契約社員にも適用される
・反対株主の買取請求--- 期間20日間(2005年本試験)
分割がなかったとしたら有したと認められる公正な価格で請求できる
承継会社
・発行する新株式数が発行済株式数の20分の1を超えず、かつ、分割交付金の額が純資産額の50分の1を超えない場合は株主総会の特別決議省略可能
・分割契約書を作成する。分割契約書の記載事項は以下のとおり
承継会社の定款(変更する場合)
承継会社が分割の際に発行する新株式の総数、種類、分割会社または
その株主に対する割当に関する事項
債権者保護手続きあり
債権者に対する個別催告必要。但し、新設分割および吸収分割の場合、官報のほか、定款の定める日刊新聞または電子公告により行えば不要。(2005年本試験)
人的分割 --- 分割会社の株主に承継会社の株式が発行される場合
物的分割--- 分割会社が承継会社の株式の割当を受ける場合
1.3.4.営業譲渡
譲渡会社 --- 営業の全部または重要な一部の譲渡は株主総会の特別決議の承認必要(2005年本試験)
譲受会社 --- 原則、株主総会の特別決議必要(2005年本試験)
但し、簡易な営業の譲受(対価が純資産の1/20を超えない場合)は省略可
・債権者保護手続なし(営業の譲受人が債務を引き継いだことを債権者に主張するには、
債権者の個別の同意が必要なため)(2005年本試験)
・営業を譲り受けた者が譲渡会社の商号をそのまま使用する場合は、会社債権者は譲受会社、譲渡会社の双方に対して弁済を求めることができる。
・営業を譲渡した者の競業避止義務(20年間、同一の営業をしてはならない)
・反対株主の買取請求 (2005年本試験)
期間 --- 20日間
営業譲渡がなかったとしたら有していたと認められる公正な価格
1.4.倒産等の手続
1.4.1.民事再生法
・手続開始要件:@破産原因たる事実の生ずるおそれのある時
A債務者が事業の継続に著しく支障をきたすことなく、
弁済期にある債務を弁済することができない時
・資産の保全処分:強制執行などの包括禁止命令
競売手続中止命令
担保権消滅請求
・再生計画案の可決:出席債権者の過半数で、議決権総額の1/2以上
1.4.2.会社更生法
・民事手続法の手続に参加するのは一般債権者に限定されているのに対し、会社更生法は担保権者や労働債権などの優先債権者や株主も拘束する。
・適用対象は倒産すると社会に与える影響が大きい大規模会社
・手続き中は担保権の実行は禁止される
・更生計画案
提出は1年以内
債権総額の1/2以上の同意で可決できるようになった
・更生計画認可前でも一部の事業部門の営業譲渡ができるようになった
・経営責任がない経営者を更正管財人に選任できるようになった
1.4.3.DIPファイナンス
事業再生緊急支援資金
--- 法的再建手続に入ってから再生計画認可決定までの期間を融資する
事業再生安定化支援資金
--- 再生計画認可決定から再生手続終了までの期間を融資する
2.知的財産権に関する知識
2.1.産業財産権の内容と取得方法
全て先願主義をとっている
特許権 --- 産業上利用することができる考案であって、物品の製造方法に係る考案
出願審査制度(特許出願日から3年以内に審査請求をする必要がある)
出願公開制度(特許出願日から1年6カ月経過した時に一般に公開される)
存続期間は出願日から20年
特許法上の物にはコンピュータプログラムなどが含まれる
(TLOに係る特許料は2分の1を免除)
実用新案権に基づく特許出願は下記の場合を除き、実用新案権者が行うことができる(2005年本試験)
@ その実用新案登録出願の日から3年経過した時
A 実用新案出願人または実用新案権者から実用新案技術評価書の請求があった時
B 上記以外の者がした実用新案技術評価書の請求にかかる最初の通知を受けた日から30日を経過したとき
実用新案権に基づく特許出願によって得られた特許権の存続期間は、実用新案権の登録出願を行った日から20年となる(2005年本試験)
実用新案権 ---産業上利用することができる考案であって、物品の形状、構造または
組合せに係る考案
(自然法則を利用した技術的思想の創作の考案で技術的に高度でないもの)
無審査主義
有効要件 --- 産業上利用可能、新規性、進歩性、不登録事由に該当していないこと
存続期間は出願日から10年(平成17年4月1日から)
実用新案技術評価書 --- 有効性について特許庁の一応の判断を示す資料
意匠権---産業上利用することができる考案であって、物品の形状、構造もしくは
色彩またはこれらの組合せに係る考案
有効要件 --- 産業上利用可能、新規性、創作的非容易性
存続期間は登録の日から15年間(2005年本試験)
不動産を含まず動産が対象
秘密意匠の期間は3年(2005年本試験)
商標権---産業上利用することができる考案であって、物品の記号または主体的形状
に係る考案
・ 図案化されていないただの文字は商標登録を受けることができない(2005年本試験)
・ 商品または役務について慣用されている商標については商標登録を受けることはできない(2005年本試験)
・商号、商品商標と役務商標がある
・存続期間は登録の日から10年間、継続可能
・先使用による商標を使用する権利を主張するためには周知性が求められる
・また、不正競争防止法上の周知表示混同惹起行為で商標を保護するには周知性が条件
2.2.著作権の内容
著作権等の種類と内容(2006年本試験)
著作権 --- 思想または感情を創作的に表現したもの
著作者人格権 --- 公表権、氏名表示権、同一性保持権
いずれの権利も第3者に譲渡または相続させることはできず著作者自身に専属する
著作隣接権
--- 著作物を利用し伝達する者に対して、その利用行為に創作性を認め保護するもの
実演家、CD製作者、放送事業者
著作権の成立と保護
無方式主義(創作した時点で自動的に権利が発生する)
著作者の死後50年間権利が存続する
著作権を侵害するものに対しては、侵害の停止または予防を請求することができる。
コンピュータプログラムそのものは著作権の対象にならないが、特許法、不正競争防止法で保護される。
特許・・・アイデア=技術的思想であれば保護する
外部から容易に解析できないとすれば営業秘密として保護されるべきであり、不正競争防止法の対象となる。
ソースコード・・・著作物は思想または感情を創作的に表現したものであるが、ソースコードも知的な創作活動として表現したものであれば、著作物に該当すると考えられ、著作権法の保護の対象となる。
2.3.知的財産権に関する契約など
産業財産権に関する契約
特許権
専用実施権 --- 独占排他的に特許発明を実施できる権利
特許登録原簿への登録が設定契約の効力発生要件(2005年本試験)
通常実施権--- 特許発明を実施することができるが独占権はない
特許権を侵害した者 --- 5年以下の懲役または500万円以下の罰金
法人は1億5千万円以下の罰金
職務発明
・特許を受ける権利は従業者などに原始的に帰属する。
・従業者が職務発明に関する特許を受けた場合は、使用者は法定通常実施権を無償で
取得する
・契約や勤務規定で、特許を受ける権利を使用者などに承継させるよう定めることが
できる。その場合、従業者は使用者から相当の対価を受ける権利を有するが、
実施する権利は認められていない。
著作権等に関する契約
3.取引関係に関する法務知識
3.1.契約に関する基礎知識
3.1.1.契約の成立要件
意思表示の効力発生時期
到達主義が原則。
但し、承諾の意思表示は発信主義をとっている。
(例外)電子消費者契約法では、電子商取引の契約の成立の時期は到達主義を採用
即時取得
無権利者から動産を譲り受け、平穏かつ公然にその占有を始めた者が善意・無過失である時は即時に権利を取得する。(不動産取引には適用されない)
(例外)盗品、遺失物である場合、失った時から2年以内であれば被害者は返還を請求できる。
債権者代位権(2005年本試験)
債権者が自己の債権を保全するために、その債務者に属する権利を行使すること
債権者取消権(2005年本試験)
債権者が害された場合、債権者がその法律行為の取消を請求できる権利
時効制度
・消滅時効期間
一般民事債権 --- 10年
債権と所有権以外の財産権 --- 20年
一般商事債権 --- 5年
工事請負代金 --- 3年
約束手形の振出人に対する債権 --- 3年
商品代金債権 --- 2年
飲食代金、運送代金 --- 1年
・不法行為に基づく損害賠償責任(故意または過失)
知った時から3年、不法行為時より20年
(製造物責任法に基づく賠償責任の消滅時効も同じ)
賠償の範囲は通常生ずるであろう損害
3.1.2.契約の有効要件
意思のけんけつ(効果意思を欠く3つの場合)
・錯誤 --- 意思表示は無効
・通謀虚偽表示(相手方と通謀して虚偽の意思表示をすること)
--- 意思表示は無効だが、善意の第3者には無効を主張できない
・心裡留保(真意ではないことを知りながら意思表示をすること)
--- 意思表示は有効。但し、相手方が悪意または有過失の時は無効。
瑕疵ある意思表示
・詐欺 ---相手方が悪意の時だけ取消可能
・脅迫 ---相手方が善意であっても取消可能
3.1.3.成年後見制度(変更)
3.1.4.外国企業との取引に関する法律知識
・完全合意条項 --- 最後に作成した契約書の記述を最終合意事項とし、それ以前に
作成された念書などの記載事項よりも優先することを明らかにするもの
この条項を入れるよう要求された場合、合意内容はLetter
of Intentで合意済の事項も含めて全て契約書に記載しなければならない。
・英米法の下では両当事者が合意した条項に約因が含まれないと契約として成立しない
(約因とは当事者の一方が他方に提供する金銭、物、作為、不作為)
3.2.契約の類型と内容(13の典型契約)
委任契約
有償双務・諾成契約
無償双務・諾成契約
守秘義務契約
共同研究契約
売買契約
売買契約などの双務契約では同時履行の抗弁権が認められる